アニメで、登場人物の微妙な表情や些細な会話など、意識しなかったら見逃してしまうような「ちょっとしたシーン」が好きだ。そんなシーンには制作陣のこだわりが垣間見られるからだ。
今日は、特に好きなシーンをいくつか。結果全部アニオリのシーンである。
『ゆるキャン△』シーズン2#7「なでしこのソロキャン計画」の志摩リン
話冒頭2分あたり、図書館で主人公なでしこ、もう1人の主人公リン、その友人恵那が集まるシーン。
図書館の机で恵那と会話するなでしこ。その話を、なでしこの後ろにあるカウンターから盗み聞き(?)する図書委員のリン。アニメでは、話をするなでしこをアップで描き、その後ろのリンは、辛うじて表情がわかるくらいに描かれる。
「最近バイトが忙しくて部活メンバーと集まれない」となでしこがボヤくと、リンは同情の表情に変わり、直後「今日はここで臨時の部活をやる」となでしこが急にハイテンションになると、リンは警戒の表情になる。
時間にして20秒ほど。デフォルト、同情、警戒のたった3パターンの単純化された絵の変化で、リンの「優しさ」と、「なでしこに振り回されるリン」という2人の「関係性」が的確に表現される。いい。
この視点からの絵はアニオリ(話が逸れるが漫画は漫画らしい表現になっている)。
押井守版『うる星やつら』シーズン1#15「せつぶん大戦争」のラムの親父
冒頭4分〜、鬼族の節分行事に遅刻するラムを待つシーン。
ラムの遅刻にイラつき、敵の福の神にブチギレるラムの父親。ピリピリした空気の中でラムがやってくると、ブチギレる、ことはなくほんわりとした笑顔になってラムを迎える。
親父の優しさと親バカよ
完全アニオリ。残念ながら、去年の秋から放送のリメイク版ではこのシーンはなかった。この話に関しては、この時点で押井守の圧勝である。
『ぼっち・ざ・ろっく』#7「君の家まで」の母親とぼっち
(リンクがうまくいかねえ)
本命である。
11分〜、主人公ぼっちが友人、ぼっちの家族と食卓を囲むシーン。
陰キャモードに入って目をぐるぐる回すぼっちを、母親が唐揚げの香りを嗅がせることで現実に引き戻す。その後「大丈夫?」とでも言うように目を開いてぼっちを一瞬見つめる母親。
文だととんでもなくバカみたいなシーンに思えるが、我が子のことを熟知し、慈愛に溢れる母親がこの一瞬に表現される。
この後、瞬きをしながら母を見つめるぼっちは、どのような気持ちだったのだろう?
母親、ぼっち共に明確な表情を描かないことで、逆に微妙な言葉にし難い感情が伝わってくる。というか目の動きだけでなんとかしている。このシーンはほんとにエモいし尊い。
アニオリ。というかこの食卓のシーンが完全にアニオリである。おそろし。